タイトル通りの、そのまんま上書きされた看板がある。
元レストランだった所の建物と敷地を、きのこ栽培業者が工場として使っている。
普通なら全面を白く塗り直してから描くのを、直接上書きしたのは、
店のような客寄せ効果は必要がないので、
単に看板としての機能さえ果たせばいいという合理的な判断によるものだろう。
それにしても思い切ったやり方だと思う。
こちらは飲食店向けの貸し店舗だった物件である。
庇テントには少なくとも3回以上店名を書き換えた痕跡が残っていた。
新しく書き換える度ごとにペンキで前の名前を塗りつぶしていたのは間違いない。
それなのに文字の歴史だけがずっと残っているのは、
文字部分がプラスチックのシールを貼り付けたものなので、
ペンキよりも劣化しにくく、紫外線の漂白作用もほとんどないからである。
その結果、まるで多重露光の写真のように、店の歴史を表すことになった。
まさに、「時は流れない それは積み重なる。」といえるのかもしれない。