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写真散歩Ⅱ Photoing in neighborhood

紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?


 
 
紅葉の仕組みは解明されていても、その植物にとっての意義はよく分からないともいわれることがある。
しかし、もしメカニズムの理解がほぼ正しくて部分的な誤りがなければ、その目的は仮にでも明らかになるのではないかと思う。


植物の生き残りの為の知恵は、緻密な合理性をともなって発現するのであり、無駄の入る隙はないからである。
 
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315285.jpg



 
 
 


まず、落葉樹がなぜ落葉するのかについて。
 
葉は光合成でエネルギーを生み出して枝や幹に送る。しかし同時に、呼吸もするのでエネルギーの消費もすることになる。



秋になり気温が下がると、あまり光合成をできなくなる。


すると生み出すエネルギーより、消費するエネルギーの方がだんだん多くなってしまう。


そこでエネルギーを節約するために落葉する。
 
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315290.jpg



 
 
 
また気温が下がって土壌が凍結すると、根から水を吸収できなくなる。


しかし、葉は蒸散によって水分を放出する。


結果として、植物全体が乾燥してしまう。


そこで乾燥を防ぐために、落葉する。いわばリストラと同じ状態だ。
 
落葉の準備が始まると、枝と葉の間に「離層」が形成される。これは葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層のことで、葉が落ちた後に茎を保護するコルク組織である。
この離層が形成されると、栄養物質の移動が妨げられるようになる。
  
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315349.jpg



 
 


 
次に、なぜ紅葉するのかについて。
 


これは、葉から主に窒素等の栄養成分を回収するためである。
窒素は緑色の葉緑体・クロロフィルに含まれている。


そこで落葉する前にクロロフィルを分解し、窒素を回収・再利用する。
この時、離層があっても体内を移動しやすくするために、窒素とタンパク質はアミノ酸に分解され、またデンプンはブドウ糖に変えられる。
そして貴重なミネラル類(リン、カリウムなど)の多くはイオンの形で、まだ機能が残っている維管束を通して茎、根などへ運ばれ貯蔵される。
 




クロロフィルは分解されるが、アントシアニン(赤い色素)やカロテノイド(黄色い色素)は窒素が含まれないので残る。


緑色がなくなることで、赤色や黄色が目立って見えてくるわけである。
 
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315421.jpg



 
 
 
紅葉し始めた落葉樹の葉は、クロロフィルの回収を始めるとともに光合成ができなくなる。
その理由は、アントシアニンが赤くなるのは主に日光の当たる側の表面であり、
葉肉細胞の日照を和らげる遮光色素としての働きももっている。
この色素により葉肉細胞を擬似的な日陰状態にして、光合成の効率を下げている。
 
こうして光合成ができなくなった葉緑体(クロロフィル)は分解がさらに促進される。 


従って、きれいな紅葉を見せる樹木ほど資源回収が十分に行われ、落葉する事になるのである。
ちなみに黄色は赤色に準じた遮光効果がある。
 
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315404.jpg



 
  
 
それでは、春と夏にはアントシアニンの赤い色素の合成が起こらないのに、なぜ秋にだけ赤くなるのかという疑問が出てくるかもしれない。
 
それは、葉と茎の間の物質の移動が妨げられることがスイッチになっているからだ。
事故などで枝や葉が折れたり切れたりつぶれたところで物質の移動が妨げられると、その先の方ではアントシアニンが作られる仕組みになっていて、秋でなくても紅葉のように赤くなる。
秋の落葉の準備の時に形成される離層は、これと同じ働きをするので赤く色づくのである。
 


 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315560.jpg



  
 
 
また、落葉樹の中には、紅葉するものと、緑のまま落葉するものとに分けられる。
この違いを店の食品販売戦略に喩えてみよう。
 
紅葉する葉は、赤みが増すにつれて光合成ができなくなっていく。
これはスーパーで賞味期限切れが近くなった食品が安売りされるのに似ている。
一個当たりの利益は少なくなるが販売数を伸ばすことで費用(窒素)をより多く回収できる。
 
一方で、紅葉しない葉は落葉する直前まで光合成ができる。
これは窒素回収エネルギーよりも余分のエネルギーを得る戦略を採用しているのである。
コンビニで賞味期限切れが近くなってもギリギリまで値引きせずに売り、その後は廃棄するのと同じだ。


売上げ数は伸びなくても、それを24時間営業でカバーする。 


 
 
紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?_f0377679_20315685.jpg



 

秋に、急で強い冷え込みがなかった年には、葉がそれほど鮮やかに色づかないことがある。
これは、急いで落葉の準備をする必要がないので、紅葉のメカニズムが緩やかに進行する為である。  
 
結論としては、紅葉は、葉のエネルギーを効率よく回収しながら落葉の準備を促進するための戦略ということになる。
 
 
 
 
 

 
 
 

by giovannibandw | 2015-10-31 15:17 | 自然
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